―偽愛―



“アタシね…小さい頃 白雪姫の話しが好きだったんだ。”



なぜだか 海翔に聞いてもらいたくなった



“いつかアタシにも、kissで目覚めさせてくれる王子様がいるって… 笑っちゃうよね こんなワガママで口の悪いお姫様なんか、いるはずないよね…
今の彼氏に会った時、アタシ白雪姫になれる気がしたんだ。きっとこの人ならアタシを目覚めさせてくれるって”



海翔は何も言わず 煙草をふかして 話を聞いていた



“アタシ、こう見えても今の彼氏が2人目なんだ。1人目の彼氏は最低な男で、どうしようもないぐらい女好きだったんだ…で、別れてすぐに付き合いだしたのが今の彼氏… 昼にも話したけど、アタシの理想の王子様なんだ。だから、アタシ彼の言う事なら聞いちゃうんだ。”




“最後はノロケか…なん?ノロケ話聞かしたかったん。
まぁ、恋愛は人それぞれじゃけん…
自分が疲れんようにしたらイイ”



海翔は 煙草を灰皿に潰して“おやすみ”と一言 言って 網戸を閉めた



アタシはまだ少し 頭がフラ~としていて



ただ横の窓に、もたれかけていた





風鈴の音にかき消されそうな波の音が 心地よかった



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