―偽愛―



アタシは静かにゆっくり ドアを開け



忍び足で 廊下と階段を歩く



どんなに注意してゆっくり歩いても



古くなったウチの木造の家は ミシミシと音を立てて



歩くアタシの存在を知らせる





アタシは下に降りて 業務用冷蔵庫から オレンジジュースを取り出し 栓抜きで栓を抜く



シュポ


“寝れんのん?”


ビクッ!



アタシが あんなに気をつけても、ミシミシなるのに



海翔は なにひとつ 音も立てずに降りて来た



“悪い…驚かしたなぁ…”



“アンタも寝れんの?”



“オタ、広海が下に降りる音がしたけん…”



“起こしちゃったね。アンタも飲む?”



“ありがとう…もらうわ。じゃけど、母ちゃんに怒られるで”



“いつもの事じゃけん…”



アタシはもう一本 取り出し栓を抜く



“ここは、みんな起こすから…外に出ようか?”




アタシ達は 浜辺へと歩いた



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