―偽愛―
人気の全くない 砂浜
真っ暗で ほとんど何も見えない
“真っ暗じゃけん…離れんときや。”
そう言われたにも かかわらず 大きなブロックにつまずく
“プッ…なんしょん?”
せっかくのオレンジジュースが 台無し
“あ~あ。ジュース半分以上、残っとったのに…”
“ほれ、これ飲み。まだ口つけて、ないけん。それから危ないけん…”
アタシは左手にオレンジジュースを 右手に海翔の差し出してきた左手を
海翔の左手の薬指には結婚指輪が、はめてあって
たまに その指輪がアタシの右手のピンキーリングにあたって
カチッと音がした
波打ち際までやってきて
2人で 一本のジュースを回し飲みする
大した会話をするわけじゃないけど
繋いだ手が 心地よかったりした