―偽愛―



人気の全くない 砂浜



真っ暗で ほとんど何も見えない



“真っ暗じゃけん…離れんときや。”



そう言われたにも かかわらず 大きなブロックにつまずく



“プッ…なんしょん?”



せっかくのオレンジジュースが 台無し



“あ~あ。ジュース半分以上、残っとったのに…”



“ほれ、これ飲み。まだ口つけて、ないけん。それから危ないけん…”



アタシは左手にオレンジジュースを 右手に海翔の差し出してきた左手を



海翔の左手の薬指には結婚指輪が、はめてあって



たまに その指輪がアタシの右手のピンキーリングにあたって



カチッと音がした






波打ち際までやってきて



2人で 一本のジュースを回し飲みする



大した会話をするわけじゃないけど



繋いだ手が 心地よかったりした



< 32 / 157 >

この作品をシェア

pagetop