―偽愛―
―報われない恋―
海翔は何も言わなかった
アタシも なにも話さなかった
ふたりで 波打ち際に座り込んでいた
砂浜には アタシと海翔の影が写っていた
“…吸うか?”
ポケットから煙草の箱を出して 一本に火を点けた
“ほれ…”
海翔の口にあった煙草は アタシの指と指の間に挟まっていた
フーッ
大きく深く吸い込み吐き出す 白い煙
“…なぁ。チューしてもエエか…?”
“いいよ”
アタシ達は 抱き締め合う事もなく
指に煙草を挟んだまま
座り込んだまま
チューをした
ただ 煙草の香りがするだけのチュー