―偽愛―
水着に着替えて 浮輪を頭からくぐり、腰の位置まで降ろして下の階に下りた
ビーチサンダルを 玄関で履く
“乳…意外とデカいな…細いのに”
気が付くと アタシの真後ろに
アタシの隣りの部屋の客
“な、なに?!”
“細い割りには乳デカいなと思って…”
優人より少し低い男の声
色の白い肌には似合わない声
“うっさい!乳見たなら、金払えよ!”
“オタクら親子 金の事ばっかりだな”
腹立つ
アタシは無視して 海に向う
“今日は波が荒いから 気をつけろよ~”
なんだかムカつく
アタシは熱い砂浜を歩いて 海に向う
本当だ
今日は波が少し荒い
そんなに遠くに行かないし 浮輪もあるから大丈夫だよね
海に足をつけてみる
冷たいというより 温かい
気持ちイイ
今度は腰までつけてみる
イイ感じ
少し荒い波
ちょっとだけ 沖まで行ってみよ
ゆっくりゆっくり 浮輪にぶら下がり、沖まで行く
思ったより波が荒い
引き返そう
そう思った時には もう遅かった
どんなに ばた足しても波に流されて 沖へと押しやられる
徐々に小さくなる アタシの実家