(短編)高校野球、マウンドの上の君。
後1人でチェンジ…
さっきよりも少しは状況がマシにはなったけど
ピンチなのに変わりはない。
きっと…大丈夫だよね?
次のバッターが出て来た。
少し背が大きけど、正に標準体型といった感じ。
バッターが構えると
観客は話すのをやめ、グラウンドを食い入るように見る。
私もその中の1人だ。
アイツがさっきと同じように
静かに腕を空に向かって掲げ
ボールをキャッチャーに届ける為、
腕で空気中に弧を描き、
ボールから手を離す。
放たれたボールは勢いを保ったまま、
一直線にキャッチャーを目指して進む。
バットを振る。
でも…金属の音は聞こえて来なくて、
代わりにボールがグローブに納まる音が小さく聞こえた。
私の周りの人が喜びと安心の為か
騒ぎ始める。
私は安堵のため息を吐いた。
またすぐにアイツとバッターは睨み合う。
なんか…嫌な予感がした。
私の感じていることなどお構いなしに
試合は進んで行く。
バッターが構え、
アイツも投げる構えを取る。
どうか、次もさっきみたいにストライクであって欲しいと願った。