水瓶の中ー【短編集】
屋上
暦が秋に入った夜。
風は涼しさをまとい、
頭上を覆う雲達は
北東の方へ急速に流れて行った
昨日上がった8月最後の花火は
夏の終わりを告げたものなのか
風が髪をゆすり頬を撫でていく
空気が冷たく思う頃
やがてこの屋上へも来なくなるのだろう
星ぼしとのしずかな会話や
夜風との戯れや
大きな空に覆われることも
夜景観測も
しばらくは無くなるのだろう
だから今しばしは
この時と空間を味わおうと思う