水瓶の中ー【短編集】
終点の町
家の近くを通る馴染みのバスの終点の町。
見知らぬ所。
見知らぬ風景。
ここにいる人達は誰一人、私の事を知らない。
私はこの町を知らない。
この町の店の中を知らない。
不安と期待。
ちょっとした冒険心からの高揚。
私を知る人は、私がここにいる事を誰も知らない。
胸をよぎる寂しさと切なさ。
見知らぬ町の港からの潮風。青い空。
これぞ海の島。
港にはさらに人影がない。大きな、倉庫、倉庫。
家の近所では感じられない空気。
目に映る人々。
ここの町の人は何を思いここに住む?
いつの間にか日が暮れ、見知らぬ町の西日差す。夕焼けは夜空へと。
歩き疲れた私はふと家を思い出す。
我が家へ帰りたい。
でも、また、いつか。
そう思いながら、家路へと。