心の国のアリス
聞いてるだけで大丈夫なんじゃないのかよ、とストレスは募るばかりだ。あまり答える必要もない質問だったが、人の顔をじっと見つめながらの質問がうざったいので、仕方なく答えることにした。

「何をって…まぁ、国語とか数学とか?」

「告誤って間違い探しのことだろう。そんなもの教養って言われてもなぁ。」
「数楽って楽しいことを数えてるだけだろう。勉強も少しはやらないとなぁ。」

こいつらにまともな回答をした自分がバカだったと後悔した。

「じゃあ、あなた達はどんな教養を?」

ちょっとムキになって聞き返してみたものの、やはり返ってくる答えは望んだものとはかけ離れたものだった。

「謝解の勉強はためになったなぁ。やっぱり社会に溶け込むにはマナーが大切だからね。」

少しでもいいから私にもそのマナーとやらを見せてほしかった。

「価学の勉強は生きてくうえで必要だね。物の価値がわからなければ生きていけないよ。」

物よりも人間としての価値を見出だしてほしいものだ。

「まぁ、何よりも僕の得意なのは詩の暗唱だな。」
「いや、君よりも僕の方が詩の暗唱は得意だな。」
「じゃあ、最初から言ってってやろうか。」
「いや僕が最初から言ってってやろうか。」
「いやいや、僕が…。」
「いやいや、僕が…。」

こうして意味のない兄弟喧嘩をしてるスキに私はその場から抜け出し、この上ない時間の無駄だったと後悔しつつ、うみが走って行った方向へ向かって行った。
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