心の国のアリス
どう見ても敵意のなさそうなその女性に、私は話し掛けてみた。

「あの…あなたは?」

女性はチラッとこっちを見た後、目を閉じ、そして冷たく言い放った。

「自分は名乗りもせずに名前を聞くなんて、礼儀知らずじゃない?」

「あっ、ごめんなさい。私は有栖川るいと言います。」

「別に知りたくもないけど…。私は吉田みどり。何か用?」

みどりは煙を吐きながらだるそうにそう言った。

「あの、ちょっと聞きたいことがあるんですけど…。」

「私はあなたに話したいことなんかないけど?」

そう言って私に向かって煙を吐きかけてきた。礼儀知らずはどっちだ、と怒って立ち去りたい気分だったが、こんな森の中で他に人に会えるとも思えなかったので、仕方なくなんとか情報を聞き出すまで頑張ろうと粘ることにした。

「あの…森を出たいんですけど。」

「出ればいいじゃない?」

「どっちに進めば出れるかお聞きしたいんですけど…。」

「どっち行ってもいつかは抜けられるでしょう。」

「この大きさのままじゃ…。」

「何?この大きさがいけないって言うの?」

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