心の国のアリス
私は立ち尽くし、そして座り込んだ。このまま一人だったらどうしよう。とてつもない不安に襲われる。寒いわけではないが、異様にひんやりとした空気。この感覚はなんだろうか。まるで、人はいないけれど町が一人で歩き出しているような、飲み込まれそうな感覚がする。
頭を抱えていると、ザッという物音に気が付いた。さらに足音が聞こえる。誰かが走っているようだ。
慌ててまわりを見回すと、白いワンピースの女の子が走っている。知らない子だが、今は選り好みしてるような場合ではない。むしろ、人との再会に心踊らせ、慌ててその子を追いかけた。

「待って!ちょっと待って!!」

その言葉に足をとめる女の子。

「何ぃ?今急いでるんだよぉ。早くしないと遅刻しちゃうから、じゃね。」

そう言うとふたたび走り出す。

「え!ちょっ、待って!」

急いで追いかける。せっかく人がいたのに逃がしてなるものか。
何か、何か聞くことは…。聞きたいことは山ほどあるはずなのに、動転しているためかわけがわからなくなってきた。
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