心の国のアリス
「あのガラガラは新しかったんだ。そのガラガラを壊すだなんて人としてあり得ない!」
「だからと言って皿ぶたを投げる事はないだろう。投げるなんて人としてあり得ない!」

この不快な掛け合いは聞いたことがある。そう、茂みの中から出てきたのは戸井田たみおと戸井田だいの双子だった。二人とも凄い装備…と言っても鍋を被ったりじゅうたんを体に巻き付けたりといった具合だが、どうやら決闘をしているらしい。

「こいつは俺のガラガラを壊したんだ。昨日買ったガラガラなんだ。こいつのほうが悪いだろう!」
「こいつは俺の皿ぶたを投げたんだ。これじゃ防具の意味がないよ。こいつのほうが悪いだろう!」

結果的に助けてくれたことには感謝するが、このわけのわからないケンカに私の意見を求めないでいただきたい。

「やっぱり兄弟なんだから…そんな決闘みたいなことはやめたほうが…。」

ダメもとでケンカの仲裁をしようと試みたが、やっぱりダメだった。

「非常に腹立たしいが、それと同時に腹が減ったので、決闘は30分で終わらせよう。」
「腹が減ったそうだが、俺もやっぱり腹が減ったので、決闘の後に夕ご飯にしよう。」
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