心の国のアリス
高所恐怖症の人が高いところに来たときってこんな感覚なのかもしれない。目が回ったときのようなクラクラした感覚がする。
だが、今回は気を失うこともなく、しばらくすると少しずつ気分も落ち着いてきた。

もう着いたのかな、とそっと目を開けると、どうやらお城の庭にいるようだ。

「あ、あれ?加藤さん?うみちゃーん?」

キョロキョロと見回しても、二人の姿が見えない。
そういえば前回も気が付いた時は一人だったけど、そういうものなのだろうか。

それよりも、ここは赤の城?それとも白の…?
そう考える暇もなく誰かの足音が近付いてきたので、とりあえず近くの茂みに身を隠すことにした。

「いたー?」

「いや…。そんな遠くまで行けないとは思うんだけどなぁ。」

どうやら私たちのことを話しているようだ。となると、ここは赤の城の庭のようだ。

「そういや、あの二人が脱獄したところでなんか大変なことでも起こるのかね。」

「いやー、女王様の気まぐれじゃないの?王様が寝込んでて気がまいってるんでしょ。わざわざこんな時に来たあの二人も可哀想なもんだ。」

< 59 / 69 >

この作品をシェア

pagetop