15の夜はティラミス・ガールズと共に
 「そして…」

 「『そして…』じゃない。ゴタクはもういい」寿は首を振る。「あと、4時間でモノにしなきゃならないんだぜ? 分かってんのか、アンタ」

 テメェ、と清田は寿に食い掛ろうとしたのだが、美幸が「うんうん、まったくだ」と加勢したせいで、その血気は脆くも挫かれた。
 
 「ゥクッ……」清田はさも、リーダーは俺だぞ、と顔をしかめるが、この暗さではどうにもならなかった。元来、本当に殴ろうとは思っていなかっただろうが…
 
 「んで、寿くん、レイアウトは?」
 「あぁ、こんな感じで…」清田の事などすっかり無視し、双子は頭を寄せて、寿の用意したラフを覗き込んだ。

 「うぅん、よく見えぬわ」と言うのは美幸。3人は段々と双子の性格を掴み始めてきていた。

 「沢北、懐中電灯を」
 
 「おい!呼びつけにするなよ」沢北から懐中電灯が投げられ、寿が片手でキャッチする。「俺達は年上だぜ?」
 そう言って沢北は、寿にちょっとした“警告”をするが、寿には届かない。
 
 「ちょい恥ずかしいな」と、寿は清田や沢北など完全に眼中にない。この社交性の無さは芸術家の片鱗でもあるのかもしれないが…。
 
 「人に絵を見せるには3年ぶりだし、君らは美大生だ…」

 『いいから早く』
 
 双子に促されるまま、寿は懐中電灯のスイッチを入れた。
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