15の夜はティラミス・ガールズと共に
 老人は喋り続けた。
 「あのー、アンタの状況も知らんでこう言うのもなんだが…。もし暇ならば、ちょいと手伝っても貰いたい事があるんだよ。あんたは思い付きもしないかもしれないが、私達は『町の美化』という事に関心を寄せる」


 町の美化…?
 確かに思いつかない。

 「殊に最近は、不良青年達の落書きが後を絶たん」


 「落書き…?」
 一ヶ月も使われていない田岡の喉は、すっかり錆び付いていた。だから、その声は彼本人にしか聞き取れない、呻りみたいなものであった。

 やれやれ、人生を賭して役者とやらを50年以上も続けたって、たった少しの間も閉口していれば、こうして牛みたいな声しか出ないのだ。
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