15の夜はティラミス・ガールズと共に
 田岡を含めた美化ボランティア一行は、近所の小学校へ歩を進めた。

 老人達の行進は遅々としたもので、それだけで田岡は、自分が一番の若さを持っている事に気付く。

 まぁ、けれどもそれは意味が無い。

 
-来年の紅白歌合戦には死んでいるのだ-
 
 彼は、きっと、遺作となるドラマで共演したアイドルが、黄色い声援を浴びながらNHKホールの大ステージの上で踊る様を見る事なく死ぬのだろう。


 …あと、3ヶ月の人生なのだ。

 死に寄り添う、脆弱で繊細な存在であるべき小説家という人種でさえ、図々しく頑強になったこの時代にあって、誰が3ヶ月後という時間に永遠を求めようか…。

 
 そんな事を無為に考えているうちに、田岡を連れていた一行は止まった。
< 105 / 111 >

この作品をシェア

pagetop