15の夜はティラミス・ガールズと共に
 「消しましょう」

 田岡は干乾びた全身に、鮮やかな血潮が満ちていくのを感じた。

 そうだ、こんなものは消されなくてはならないのだ。


 「そう、急がんと」
 田岡の勇み足のつま先を引っ掛けるように、老人達は笑った。

 「手順など知らんでしょう?」

 「しかしも、まぁ、そんな上等な服で」


 
 「あ…すみません。……ジャージなどの類は持ってないんです」
 むしろ、何が有るというのだろう、と田岡は内心苦笑した。

 
 「じゃあ、せめて上着はコッチにしなさい」
 
 老いてもなお可愛らしい印象を与える女性が、後から田岡の肩に作業着を掛けた。


 田岡は一瞬、母親を想起した。が、それは間違いだ。寧ろ、その女性とは、ほとんど同級なのである。
 
 彼は、いつの間にか、そんな歳になってしまっていたのだ。
  
 「……どうも」
 一生を思わせる永い、それでいて刹那の沈黙をたっぷりとって、田岡は頷いた。
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