15の夜はティラミス・ガールズと共に
 「この一ヶ月で気付いた事は…」
 田岡は肩をすくめた。「僕は、どうやら、何も知らないらしい」


 ………
 レジャーシートを拡げて、地べたに座ったのは、一体何年ぶりだろうか。


 「いやぁ、やったな」

 ボランティア一団は、銘々にお菓子を食べたりお茶を啜りながら、自分達がさっぱり裸にしたコンクリート壁を眺めている。

 「どうです、田岡さん」


 「悪くない」
 コンクリート壁は本来の灰色に姿を換えたが、そこには以前の派手な原色の文字列には無い、温かみがあるように思えた。
 
 「でも田岡さん、全然役に立たないの」

 「一番若いんだから、頑張ってもらわにゃ」

 
 「はい」田岡は振舞われたチョコレート菓子を手にしたまま、「しかし…考えてみれば、僕は劇の中以外では“ジャージすら着たことも無かった”んですね」と呟いた。
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