15の夜はティラミス・ガールズと共に
 ドラマの撮影現場。

 日々量産されるテレビ向けの作品では、ディテールに拘ることはできない。
 
 政治家、どこかの社長、大病院の院長…それなりに富がありそうな人種は、一緒くたに“金持ち”として処理され、その自宅は定番の様相を呈す事になる。
 
 巨大な机に、毛の長い絨毯、本皮の重厚なソファに、洋書を満載した本棚…。テレビは無く、携帯の充電器は無く、PCは無い。鉛筆は無く、ノートは無く、机の上はピカピカで、もしここが仕事部屋だとするならば、この部屋の主は全てを頭の中で処理できるレクター博士みたいな人物に違いない。
 
 「すべてはポーズに過ぎない…」
 田岡は生理的に不安を憶える、一切の生活感を持たない奇妙なそのセットに思わず呟いた。


 
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