15の夜はティラミス・ガールズと共に
 「デハナゼ、アナタガサツジンナドヲ」
 
 「世の中にはどうしようも無い事もあるのだよ」田岡、もとい、田岡演じる男は目を細めた。
 
 「まるで…。そうだ、子供の初節句に、真新しい鯉のぼりがうな垂れてピクリとも動かないのと同じだ。金箔を誂えさせた特級ののぼりを買うてやってもな、風はどうする事もできんだろう?」
 もっともらしい事を、もっともらしく言うには、田岡の顔はピッタリだった。
 
 そしてここで、例のADが答える。
 「人が一人死んだというのに、あなたは」
 
 「ヒトガヒトリシンダトイウノニ、アナタハ」
 
 気持ちの糸が切れてもおかしくないのに、田岡はよく演技を続けた。
 田岡は厳しい表情を崩さなかった。

 
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