15の夜はティラミス・ガールズと共に
 「だからさ! これが証明だ。私は間違った行いだったとは今でも思わん」そう言うと田岡は立ち上がった。これはアドリブなのか、ディレクターやカメラマンが一瞬慌てたのが、場の空気の振るえで分かった。
 
 「フッ…かわいいじゃないか?」田岡は居もしない空のソファを見下ろし、微笑んだ。ここに他の俳優が座っているハズというわけだ。
 
 「部下だった若者が…」と、田岡は静かに口調を強める。「法の従者となって今、罪人を捕らえようというのだからな…! ……罰は受けるよ。だが、罪は認めん」
 
 田岡の演技はなかなかであった。
 
 しかしその余韻を、進行役の「はいカット! いただきましたぁ!」という声が、ブツリと乱暴に切り捨てた。

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