15の夜はティラミス・ガールズと共に
手紙には、まずこう書かれていた。
「近況や挨拶などは読まれないのを重々承知していますので省きます。今更、家族ごっこをするつもりはありません」
まず、ここで田岡は呟く。
「…まったくだね」
手紙は続いた。
「あの土地の件です。いい買い手を見つけておきました。伯父さんや伯母さんの承諾も得ています。 あれが元来、本家の所有である以上、裁判沙汰になれば、お祖父さんの看護をしていない父さんに、勝ち目は万に一つもないのです。 もちろん弁護士などを望まないのは、こちらも同じです。どうか分別ある判断を。 こちらに電話して下さい。それと同封した健康診断書は母からのものです。離婚の理由は知りま…」
「やれやれ……。また金の話か…」田岡は手紙を破り捨て、ウィスキーに手を伸ばした。「屈強な男に育ったもんだ。手垢に塗れた僕の金で“育った”ことはある…」
そう、手紙の主、田岡裕とは、彼の息子だったのである。
「近況や挨拶などは読まれないのを重々承知していますので省きます。今更、家族ごっこをするつもりはありません」
まず、ここで田岡は呟く。
「…まったくだね」
手紙は続いた。
「あの土地の件です。いい買い手を見つけておきました。伯父さんや伯母さんの承諾も得ています。 あれが元来、本家の所有である以上、裁判沙汰になれば、お祖父さんの看護をしていない父さんに、勝ち目は万に一つもないのです。 もちろん弁護士などを望まないのは、こちらも同じです。どうか分別ある判断を。 こちらに電話して下さい。それと同封した健康診断書は母からのものです。離婚の理由は知りま…」
「やれやれ……。また金の話か…」田岡は手紙を破り捨て、ウィスキーに手を伸ばした。「屈強な男に育ったもんだ。手垢に塗れた僕の金で“育った”ことはある…」
そう、手紙の主、田岡裕とは、彼の息子だったのである。