15の夜はティラミス・ガールズと共に
 何故田岡が、こうして息子と決定的なほどの決裂関係にあるのかを、ここで語る必要があるかもしれない。
 しかし、それは結局の所、無意味だ。なぜなら、それらは酷く個人的な禍根に根ざすものだし、それを懐古したところで何かが動き出す事はない。
 もちろん息子も手紙の中で『家族ごっこ』と記したように、仲直りするのが無意味なのは両者納得のところだろう。それを強行する事は、エンジン自体が逝かれてしまったバイクの、トランスミッションを直そうとする作業に近い。

 ……まぁ、かくいうわけで、田岡は還暦を過ぎてもなお、“思春期の絶望のような孤独”の中にいた。

 潔癖のもと、全てを拒絶する“あの孤独”だ。

 そうだ、それは“寿少年と同じ”なのだ。
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