15の夜はティラミス・ガールズと共に
 「…いいだろう」
 田岡はそうしたテレビの無能っぷりに何かを決断した。彼は用紙を鞄に詰め込んだ。
 「丁度人生に飽きてたところだよ。癌でも見つかれば、少しは活気が出るだろう」

 「…いやぁ田岡さんは、お歳を召して、ますますお父様のように演技に重厚さが増していますようねぇ」
 テレビは不必要にも、俳優だった今は亡き田岡の父の話を持ち出した。
 
 田岡は一瞬、噴出した。
 いやいや。この醤油顔のコメンテーターは、一体、父の何を知っているというのだろう、と田岡は思ったのだ。

 「ええ、そうですねぇ。 …さて、そんな名優揃いの人気ドラマ『刑事ヒーローズ』は月曜……」と、アナウンサーは巧みな笑顔で話を適当にまとめると、“番宣”とやらに従事するのだった。
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