15の夜はティラミス・ガールズと共に
 寿は脚立を降り、双子に歩み寄る。

 「大丈夫? 集中し過ぎじゃない?」
 美幸が言った。「芸術家気質なのは分かるけど、絵の世界に浸り過ぎて、脚立の上だって事忘れてたんじゃない?」彼女は特有の大らかな微笑みで言った。


 「…確かに…」双子の大きな瞳が寿を捉えた。
 
 人の目を見て話せ、とかと大人は言うけれど、彼女達のそれは尋常ではない。心までも遠慮なしに見透かそうとする大きな四つの瞳で見つめられると、寿の思春期の堅牢な殻さえも粉砕されるのだった。
 
 「確かにそうさ。 結局は、逃避行なんだ…現実からの」彼は観念したかのような、屈託の無い苦笑で言った。
  

 双子は肩を窄めて見合うと、不思議に嬉しそうに微笑んだ。
 
 「満足と幸せって思春期には良くないんだよ~」

 「現実に満足している15歳なんて、ろくな大人にならないよ~」

 
 双子は親戚の子供をあやすように寿の頬に人差指を刺した。左右から同時にだ。

 「イテテ…何すんだ……」
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