15の夜はティラミス・ガールズと共に
 「よぉよぉ」美幸はふざけて、寿の肩に肘を置いた。「知ってるかい?」


 「…何を?」


 「カブト虫も蝶々も完全変態なのよ~」


 「気味悪い幼虫時代があってこその、剛健と華麗なわけね」


 「そうそう。 で、対する不完全変態を代表するのは、もちろんあの黒光りする奴…」


 「あ? ああ、ゴキブリね…」
 寿は苦笑した。ご都合的なまとめ形だが、まぁ、説得力はなくはない。


 「そういうことよ。 “周りからいぃっっぱい蔑まれて、馬鹿にされて、光の当らない湿っぽい暗闇の中で、ヘラクレスになりなさい”」



 寿は心底の微笑みを浮かべ、それを冗談で返した。
 
 「あ、俺、蝶じゃないんだ? 画家志望なんだけど……」
 
 その久々の冗談は、彼の復活の兆しだった。
 
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