15の夜はティラミス・ガールズと共に
 「田岡さん、田岡寿男さん」

 無言で立ち上がる田岡。
 こちらへ、と看護婦は手で導いた。田岡は普通の外来診察室とは違う部屋へ導かれた。
 
 これといった診療機器が無く、その部屋はどこか不完全な感覚を持たせる。
 
 そうか。ここはきっと現実から乖離した、不治の病の宣告の部屋なのだ。
 
 
 「キミさ…」医師を待つ間、田岡はふと看護婦に話しかけた。「囲碁のルールは知っている?」

 
 「いえ」

 
 「相撲の醍醐味は?」

 
 「いえ」


 「僕も知らない。 でもなんで、病院の待合室は、それらを見る決まりになってるんだろう? 知ってる?」


 「いえ」
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