15の夜はティラミス・ガールズと共に
 「そんな下手な同情は、罪でしかないじゃないか。 ……ねぇ、もっと真摯に宣告してくれてもいいだろう? 家族、家族ってまるで緩和剤みたいに思ってるんじゃないか?  僕が万一、泣き崩れたって、君が君の判断で肩を叩いてくれたっていいだろう? 君にはそのアドリブをする権利と責任がある。医者としての君の人生だろう?」


 「ええ、そうですね…」
 医者は何かを心持ちを改めるように、座り直した。
 「…私は今まで大変な失礼を繰り返してきたようです。 …なるほど、僕の権利と責任ですか。 僕はご家族を間に入れる事で、逃げてきたように思います」 


 「もったいない…」田岡は僅かに笑った。「宣告シーンは、医者にとっての最高のハイライト・シーンなんだよ」

 
 そして二人の初老の男は一頻り笑い合った。
 
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