深海に、深海を
指から抜け落ちる砂
昼間はあんなに暑い夏の夜、

こんなにも風が冷たい、


海風は、冷える、


「…薄着して来るんじゃなかった」

露出した腕を無意識に撫で、
ざざんと音を立てる黒い海を見た、

「そんなキャミ一枚で出てくるからでしょ?
寒いなら、もう帰る?」


小さく笑い背伸びした、彼女、

あたしよりも10センチも背が高くて、

4つも年下なのに、
随分大人びた顔立ち、

「…老けてるだけじゃん」

「え?なにが?」


やば、思った事口に出しちゃった、

「ひとりごと、
…汐永(しおなが)くん、彼氏とどう」

汐永くん、
そう呼んだけど「彼女」であって、
「彼」ではない、

つまり、
あたしと同じ、女の子、




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