アザレアの花束を
心の中がむずがゆい。
* * *
それは朝から天気の悪い日だった。
直感的に
今日は晴れないことがわかった。
俺は洋館の扉を開いて外へ一歩踏み出そうとしたとき、
「どこかへ行くの?」
後ろの方から女の声がした。
振り向かずともわかる
その声の主は海さんだった。
「珍しいじゃない、玲と一緒に行かないなんて。
玲と何かあったのかしら?」
少し楽しそうに言う海さんと
うって変わって
海さんにも何か言われるのかと思い、焦りを隠せない俺。
「……どうしたの、そんなに焦っちゃって。
玲には内緒にしててあげるわよ?」
そう彼女に言われても何も言えない。