アザレアの花束を


「……親に会って欲しいの」



彼女は思い詰めた表情で、小さく俺に呟いた。


“そういう意味”ではないことは
その口調だけで、すぐにわかった。



俺は聞き返した。



「親に?」


「……お願い」



彼女は俺の服の裾を軽くつまみ、視線を地面に向けたまま話す。



「私の家がそろそろ後継ぎを考えなくちゃいけない時期になったの。

私には兄弟がいないから、
後継ぎは当然もらわなくちゃいけなくて……


そこでお父さんがお見合いを進めてきて。
彼氏がいるって言ったら諦めてもらえるかな、と思って」



“お見合い”


という言葉が俺の頭の中に残った。


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