アザレアの花束を


急に険しい表情になった海さんを見て、

俺は


“あの女のところへ行くな”


と言われる、と瞬時に判断した。



俺の腕を捕まれたとき、
終わったと思った。


腕を引っ張られ
海さんの瞳が俺を覗き込む。



そして、
ため息を吐き俺に言い放った。



「その瞳の色で、街に出るつもり?」



言われるまで気づかなかった。


海さんの手が放され、
俺はホールの隅においてあった鏡の前に立つ。



瞳は白に近い銀色で、
気のせいか髪の色も薄くなっている。



「術をかけ直しなさいよ」



呆れを含めて海さんは俺に言った。


そう言われて俺は気を高める。


術なんて習ったことが無い。

だけど俺は知っている。



それを含めて、

俺は吸血鬼なんだ。


と神が囁いた気がした。


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