アザレアの花束を


ひそひそと話す二人に気付かれないよう、俺はそっと息をひそめる。



「……ショックが大きかった場合、昏睡状態に陥る吸血鬼がいるわ」


「……っ、
まさか。吸血鬼は不死身のはずだ」



控えめに、だけど確かに動揺している玲さんを海さんが言葉で抑え込む。



「……そういう吸血鬼を見てきたから言っているの」



海さんは、この辺りでは1番長く生きている吸血鬼だ。


そのせいか、
吸血鬼の事情には随分詳しい。


だけど、
俺が愛を殺すなんて……


あり得ない。


いや、


考えたくない。



「100年生きた吸血鬼でも、そうなっている姿を見た。

……ましてや呂依なんて、まだ未熟。
そうなってしまう可能性は、十分に考えられるわ」


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