アザレアの花束を


ふっと嘲笑うように海さんは呟いた。



「皮肉よね。

昏睡状態に陥ることはあっても、死ぬことができないなんて」



しばらくの沈黙があったあと、
玲さんがきり出した。



「……それで、何が言いたい?
あの人間の娘を殺せばいいのか?」



その台詞が俺の耳に入ったとき、
俺はベッドから起き上がり、ドアを開けていた。



「彼女に手を出すな……!」



二人の視線が俺に集中する。


海さんは、ふうとため息をつき、
玲さんは俺の目の前に立ち、話す。



「聞いていたのか?」



俺は無言で頷く。


すると、玲さんは仕方なさそうに首を振って
俺を説得するように話す。



「今のお前の台詞を聞いている限り、お前に余計な感情が拭いきれていない。

そうして、人間の血を吸わないと、また同じことが起こる。

……もし最悪の事態になったら、取り返しのつかないことになる」



そう話す玲さんの表情が、切なく歪んでいた。


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