アザレアの花束を


『外に出るときは、

必ず目の色と髪の色を変えなさい』



吸血鬼はたいてい、
瞳の色も髪の色も銀色だ。


それでは街を出歩くときに、
必要以上に目立ってしまう。


だから、俺たち吸血鬼は目と髪の色を変える。



……そう、

変えなければいけないんだ。



変えていないところを人間にでも見られたら、

その人間を殺すか、

自分が捕まり
人間から自分が殺される。



――ずいぶん前に海さんが言っていたことだ。



いつも習慣付いていたから、
特に意識したことは無かったが……


だから、

これに気がついたのは、


会ってしまったからだ。




月を追いかけて、
すっかり森を出てしまった俺はとりあえず地に降り立った。


ずっと飛び続けているのも、
力を使って疲れる。


そんなとき、
月しか目に見えていなかった俺の耳に

優しく、懐かしい声が聞こえた。



「……呂依?」


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