アザレアの花束を
何で、この声が聞こえるのか
わからなかった。
どうして、
俺の名前を呼ぶの?
俺、
あのとき
約束の場所に行けなかったんだよ?
なのに、
そんな悲しそうな声で俺の名前を呼ばないで。
「呂依」
少しずつ確信を増していく声は、
震えていた。
「……お願い」
震えていて、今にも泣き出しそうな声。
すぐにでも、
抱きしめてあげたかった。
「返事して……っ」
ほんの1,2メートルしか離れていない距離が、
こんなにも遠いなんて。
「呂依……っ!」
呼ばないで。
そんな風に、
弱い声で呼ばれたら、
君を抱きしめたくなる。