アザレアの花束を
俺は彼女のほうに振り返って、
真っ直ぐに彼女を抱きしめる。
きつく、
きつく。
放したくない、
そんな思いを込めて。
「呂依……っ!」
ぼろぼろと泣き始めた彼女。
久しぶりに感じる、
彼女の体温。
口に出して、
もう一度彼女の名前を呼べるなんて。
「あ、い……」
彼女は俺の腕の中で頷く。
「愛……っ!」
彼女もきつく抱き返す。
言葉なんて、
いらなかった。
彼女に吸血鬼ということも、
バレてしまった。
それでも、
彼女は俺の名前を呼ぶ。