アザレアの花束を
ホールのソファーに座って、俺は考える。
それはもちろん愛のことだ。
いつまでも、こんな関係ではいけないことはわかるんだ。
俺が吸血鬼で、彼女は人間。
このままずっと愛のそばにいれば、
また本能にかられることになる。
……そのとき、本能に勝てる自信がない。
俺はおもむろに立ち上がり、ランプを持って地下の書庫に降りた。
何か、この状態を解決する方法はないのか。
愛を堂々と好きでいられる方法はないのか。
本の背表紙、ひとつひとつを見ながら探していると、
あるところで俺の足は止まった。
「『ヴァンパイア構造論』……?」
おもむろにその本を取って、書庫から出た。
分厚く重いその本をめくると、
手書きで所狭しと吸血鬼のことについて書かれていた。
例えば、
吸血鬼は睡眠をとらない、
涙を流さない、
味覚はない……
確かにこの本のいっていることはあっている。
だけど、誰が一体こんな本……