アザレアの花束を


だんだんと小さくか細くなっていく声を無視して、僕は洋館から飛び出た。



させない。


そんなことさせない。


『日に当たる』なんて、自殺行為だ。



空の遠くのほうで、朝日が顔を出そうとしている。


僕は急いで宙を飛んだ。



連れ戻して、正気になれ、と言い聞かせなければいけない。


最悪の場合は、その人間の少女を始末しなければいけない。



とりあえず、呂依の安心が先だ。




僕は真っ先にあの場所へ向かった。


呂依たちの話していたあの場所へ。


フードを深くかぶり、決して日に当たらないように。




そして、その場所へやっとの思いで着いたとき、一筋の光が僕の前に射した。


そして下を見下ろすと、


……いた。


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