アザレアの花束を



呂依が、いた。




「呂依!」



見つけた瞬間、僕はそう叫んでいた。


しかし、その声は呂依には届いていなかった。



すぐに地面へ降りて、呂依を影へ連れ込まねば、と思った。


そして、このマントをかぶせてやらなければいけないと思った。




そう思ったのに――……




穏やかな笑みを浮かべて、真っ直ぐに朝日を見つめる呂依。


その瞳は吸血鬼とは思えないほど、純粋で。


今すぐにでも止めたいのに、体が動かない。




なあ、呂依はどうして吸血鬼に生まれてきたんだろうな――?




朝日が姿を現して、辺りが一気に明るくなる。


明るい日差しとともに、呂依は……




淡い光を残して、


空へと還っていった。



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