アザレアの花束を
何が起こったのか、わからない。
ただ、地面に降りなければいけない、と行動だけは冷静だった。
……呂依は何処へ行ったんだ?
「呂依?」
僕とは違う声で、呂依を呼ぶ声が聞こえた。
それが自分を呼んでいることに気づいたのは少し経ってからのことだった。
振り返ると、そこには人間の少女がいた。
彼女は僕を見て、目を丸くした。
呂依じゃないことに驚いたのだろう。
「呂依は……?」
一歩あとずさった彼女は語尾を震わせて僕に訊ねる。
僕のほうが訊きたい。
呂依をたぶらかせて、あげくのはてには、呂依は日に……日に、溶けて。
「……よくも」
自分でもよく低い声がでたと思う。
僕は一歩、一歩人間の少女に近づく。