アザレアの花束を
不安な顔で僕を見る、彼女は自然と逃げなかった。
……さっさと逃げればいいのにな。
そうすれば、僕も気兼ねなく殺せるのに。
動かない彼女に手を伸ばすことは簡単だった。
そう、簡単なはずなのに。
「……ッ!」
彼女に手を伸ばしたとたん、ぱちんと音を立てて、光の粉が当たりに散らばった。
僕はすぐに手を引っ込めた。
光に弾かれた手が、ひりひりと痛む。
何が起こったんだ……?
「呂依……?」
彼女は、ぽつりと呟いた。
彼女を見ると、瞳に涙をためて、自分の両手を見つめていた。
「呂依、ここにいたのね……」
彼女は力が抜けたように、その場に座り込んだ。