涙花‐tear flower‐【短編】
少年の名はフィル。
透き通るような肌にサラサラした髪の、儚げで美しい少年だ。
気付いたとき、フィルはお屋敷に住んでいた。
父もおらず、
母もおらず、
ずっと、1人で住んでいた。
でも、フィルにとってそれは普通のことだった。
“1人”が、フィルの普通だった。
10年が経っていた。
短くも長いその年月を、フィルは何も感じることなく、ただ生きていた。
フィルは、感情を失っていた。
透き通るような肌にサラサラした髪の、儚げで美しい少年だ。
気付いたとき、フィルはお屋敷に住んでいた。
父もおらず、
母もおらず、
ずっと、1人で住んでいた。
でも、フィルにとってそれは普通のことだった。
“1人”が、フィルの普通だった。
10年が経っていた。
短くも長いその年月を、フィルは何も感じることなく、ただ生きていた。
フィルは、感情を失っていた。