涙花‐tear flower‐【短編】
「ねぇ、フィルはお花好き?」


切ったリンゴを食べながらティアがそう尋ねた。


「どうして?」

「だってお庭にたくさん咲いてたよ!」


その答えに、フィルは『あぁ、』と呟く。


「アレはね、あそこにあるから育ててるんだ。なかったら育てたりしないよ。」


そんなフィルに、ティアは納得いかない様子だ。


「ううん、フィルはお花が好きなんだよ!」

「どうして?」


頑なに否定するティアに尋ねる。

フィルには、“好き”という感情がよくわからなかった。


「だって、育てたくなかったら枯らしちゃえばいいんだよ。」

「そういえば……そう、かな?」

「でしょ?でもフィルは枯らさずに大事に育ててるよ。」


言われてみれば、確かにその通りだった。

でも、なんで大事に育てているんだろう?

フィルがそんな疑問を抱いたのを知ってか知らずか、ティアは続けてこう言った。


「大事に育ててるってことは……」




「“好き”ってことだよ!」




「そう……なのかな?」

「きっとそうだよ!」


半信半疑なフィルにティアは笑顔でそう言った。


「でも……」

「ん?」
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