涙花‐tear flower‐【短編】
フィルは、いつにもまして儚げだった。


「でも残念だな……。」

「?」


疑問符を浮かべるティアに、フィルは図鑑のある1節を指差す。


「涙花はね、咲くと青白く光るんだって。」

「すごーい!」

「うん、きっと綺麗だろうね……。」


目を閉じて、物思いにふける。

青白く光る花は、どんなに美しいだろうか……。


「でも、どうして残念なの?フィルが泣けたら咲くんでしょう?」


すると、フィルは小さく口を開いた。




「もう……枯れちゃうんだ。」




「枯れる……?」


フィルは図鑑に目を落とした。


「この本によると、涙で咲いた涙花は永遠に咲き続ける。」

「だったら……!」

「でも、咲かない……咲けない涙花は……」




「10年で……枯れてしまう。」
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