キミは許婚
「じ、じゃぁ、哲太はあたしと聖が許婚っていうの聞いて嫌な気持ちになった!?」
「え? そ、そりゃぁまぁ……明なんて男にずっと縁がなかったし。
俺が明にとって一番仲いい男だって思ってたから……ちょっと嫉妬みたいなのはあったよ」
哲太が今教えてくれた感情はきっとあたしと同じもの。
だって、少しずつ心の靄が晴れていくんだもん。
……なんだ。
二人して同じ気持ちだったんだ。
「けど、明も上条社長を意識すると変わるもんだな。今日はすげぇ大人っぽい」
「え……と、別に聖のためじゃないっていうか……て、哲太こそ! 今日オシャレしてるじゃん?」
「俺はいっつもこんな感じだよ。明が、家でスウェット姿でいる俺しか見てないだけだろ?」
「そ、そっか」
「俺も明の普段着しか見てないから、今ちょっとドキドキしてる」
「……え? 嘘!?」
「ホント。でも、彼女といる時の方が比べ物にならないくらいドキドキしてるけど」
哲太がいたずらに笑った。