キミは許婚
あの日、車の窓から覗かせた笑顔は影も形もない。
「……どうしたの? お父さん、朝から恐い顔なんかして」
「どうしたもこうしたもないっ! あの男は何だ!?」
「ちょ……お父さん! ダメよ~! そんなこと言っちゃ……」
キッチンから慌てて飛び出し、塞ごうとした母の手も空しく父の口は止まらなかった。
「他に婚約者がいるんじゃないか!」
え……?
こ……婚約者が他に……?
あの男って…………
まさか聖のこと!?