キミは許婚
面会が許可されたのは、高々に上っていた日が沈みかけていた頃だった。
それでも父の意識はまだ戻っていない。
青白い父の顔を見ながら母が悲しげに小さな声で呟く。
「このまま……お父さんが戻らなかったら……」
「そ……そんなこと言っちゃだめだって! 絶対元気になるよ!」
父の横で丸椅子に腰を掛けている母の背中を叩いた。
母は静かにうなずきながら、父の前髪を何度もかきあげていた。
目には今にも零れそうな涙が浮かんでいる……。
……あたしがしっかりしなくちゃ!