キミは許婚


ベンチから腰をあげて、気合いを入れるように息を吐いた。



「よし……」



病室に向かって歩き出した、その時……



「ありがとうってのは本人に言わなきゃ伝わんねぇんだぞ?」


「……え!?」



目で確認するよりも早く心臓がその声に反応した。


期待する心とまさかと思う心。



瞬時に現れた気持ちに戸惑いながら振り返ると……



「…………聖?」



暗がりの中、電灯に照らされながら一つの影が現れた。

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