キミは許婚
「聖……離して……! 苦しい……」
「誰が離すか。他の男の前なら精一杯強がればいい。でも俺の前では……可愛い女でいろ」
温かくて力強い腕の中と寒いくらいキザな台詞。
その二つが丁度いい温度を生む……。
さっき一人で思い切り泣いたのに、一か月くらいの涙を流したというのに……。
どこから溢れてくるのか、次々に涙が頬を伝っていった……。
「お父さんが……お父さんが倒れて……まだ目を覚まさなくて……」
「大丈夫だ。きっと疲れがたまってただけだ……ゆっくり眠ったらまた目を覚ます」
聖は泣きじゃくるあたしの頭を優しく撫でて、不安を払ってくれようとしている。